【中国会計税務実務】外債管理の2つのモデルにおける対外債務限度額の紹介
今回のテーマ:外債管理の2つのモデルにおける対外債務限度額の紹介(「投注差」モデル及び「マクロプルーデンス管理」モデル)
「外債管理暫定弁法」は、2003年1月8日、国家計画委員会、財政部、国家外貨管理局令第28号により公布され、2003年3月1日から施行されている。施行以来、10年以上にわたり、中国の対外債務(以下、「外債」という)限度額は暫定弁法第18条「外商投資企業が借り入れる中長期外債累計額と短期外債残高の合計は審査認可部門が承認したプロジェクトの総投資額と登録資本との差額の範囲内で制御されなければならない。」という規定に基づいて管理されてきた。当該モデルを「投注差」モデルと呼ぶ。
2017年01月12日、中国人民銀行は「本格的なクロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理に関する中国人民銀行の通知」を発表した。中国人民銀行は本格的なクロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理政策の実施状況を全面的に評価した上で、政策の枠組みのさらなる改善を行った。マクロ経済の熱度、国際収支の状況、マクロ金融コントロールの必要に応じて、クロスボーダー融資のレバレッジ率、リスク換算係数、マクロプルーデンス調整パラメータ等を調整し、融資のマクロプルーデンス管理を行う必要がある。当該モデルを以下、「マクロプルーデンス管理」モデルと呼ぶ。
主要内容
【「投注差」モデル外債額】
「投注差」モデルの外債限度額は2つのパラメータ、すなわち「外債管理暫定弁法」第18条に規定されたプロジェクト総投資と登録資本に依存する。外商投資企業が実際に借入可能な外債額は、単に投資総額から登録資本金を減算した差額として計算するのではなく、外国株主の保有資本金の割合に「投注差」を乗じたものと等しい。
また、中長期外債累計発生額と短期外債残高の合計額が外債限度額に含まれるため、中長期外債が返済されても、「投注差」モデルの外債限度額が復活しないことになる。
外商投資企業の投資総額と登録資本金の関係
(一)登録資本金が210万ドル以下の場合、投資総額は登録資本金の7分の10を超えてはならない。
(二)登録資本金が210万ドル~500万ドルの場合、投資総額は登録資本金の2倍を超えてはならない。
(三)登録資本金が500万ドル~1200万ドルの場合、投資総額は登録資本金の2.5倍を超えてはならない。
(四)登録資本金が1200万ドル以上の場合、投資総額は登録資本金の3倍を超えてはならない。[1]
例えば、ある外商投資企業は、投資総額が100、登録資本金80、実際の払込資本金が20の場合、当該外商投資企業は「投注差」モデルに基づき、借用可能な外債額の上限は(100-80)x20/80=5である。また、登録資本金80をすべて払込済の場合、外債額の上限は(100-80)x80/80=20であり、さらに、企業が中長期外債5を完済している場合、継続的に借入れできる外債額は20-5=15となる。
[1]「中外合弁経営企業の登録資本金と投資総額の割合に関する暫定規定」(工商企業字〔1987〕第38号)
【「マクロプルーデンス管理」モデル外債額】
企業と金融機関がクロスボーダー融資を行う場合、リスク加重残高(未返済残高の計上)の上限を超えてはならない、具体的には、クロスボーダー融資リスク加重残高は次の式で計算され、上限を超えることはできない[2]。
クロスボーダー融資リスク加重残高上限=資本または純資産*クロスボーダー融資レバレッジ率*マクロプルーデンス調整パラメータ[3]
クロスボーダー融資リスク加重残高=Σ本外貨クロスボーダー融資残高*期限リスク換算係数*カテゴリーリスク換算係数+Σ外貨クロスボーダー融資残高*為替リスク換算係数
例えば、ある外商投資企業の純資産が100、中国人民銀行、国家外貨局が公表したクロスボーダー融資のレバレッジ率が1、マクロプルーデンス調整パラメータが1.5であるとする。この場合、当該外商投資企業は「マクロプルーデンスモデル管理」モデルに基づき、クロスボーダー融資リスク加重残高の上限は100*1*1.5=150となる。その後、クロスボーダー融資リスク加重残高を計算する必要があり、期間リスク換算係数を1.5、カテゴリーリスク変換係数が1、為替リスクの換算係数は0.5と仮定し、さらに、企業がすでに5を外貨クロスボーダー融資残高として使用している場合、クロスボーダー融資リスク加重残高は、5*1.5*1+5*0.5=10であり、その後に外貨のみを借入れする場合、使用できる限度額は150/(1.5*1+0.5)=75、つまり合計80の外貨クロスボーダー融資残高があることになる。
[2]「全口径クロスボーダー融資のマクロ慎重管理に関する中国人民銀行の通知」(銀発〔2017〕9号)
[3]以上の各レバレッジ率、パラメータは関連部門が公表
注意事項
【適用モデル】外資系企業は設立初期には一般に工商企業字〔1987〕第38号に基づいて「投注差」モデル[4]を適用しているが、2017年に銀発〔2017〕9号発行後、1年間の移行期間設けられた。外商投資企業はこの期間中、自らの選択で、クロスボーダー融資管理モードを決定できるようになり、一部の外資企業は「マクロプルーデンス管理」モデル[5]への変更を選択した。実務においてどのようなモデルを適用して外債限度額額を計算するかは、外貨管理局の登録情報で確認することができる。
よって、現在において、一部の外資企業は「投注差」モデルを適用しているが、一部の外資企業は「マクロプルーデンス管理」モデルを変更し適用している。内資企業は「マクロプルーデンス管理」に基づいて外債を借り入れることができる。
【限度額の計算方法】2つの外債モデルにはいずれも多くの特殊規定と補充規則が含まれており、本文ではその基本原理について簡単に紹介しただけで、正確に計算するには関連部門に確認するか、専門機関の助けを求めていただきたい。
【限度額不足対応】「投注差」モデルであれ、「マクロプルーデンス管理」モデルであれ、外債限度額には上限規定があるが、計算方法が異なる。外債額を拡充するための手法として、例えば「投注差」モデルでは外債を株式に転換する方法を採用することができる(中国会計税務実務2023年第5号文「中国外商投資企業の外国親会社に対する債務の株式転換(DES)の実務概要」の説明を参照)。
[4]「中外合弁経営企業」とその実施条例が廃止された。及び新しい「外商投資法」と「公司法」が発効し、投資総額及び「投注差」概念については言及していない。「投注差」モデルは正式に廃止されていないが、後続の法律面で根拠を補完する必要がある。
[5]マクロプルーデンス管理を選択する場合は、最近監査された純資産データも同時に報告しなければならない。国境を越えた融資管理モデルが確定されると、変更してはならない。
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